ききみみずきんと本と図書館と…
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誘拐捜査―吉展ちゃん事件
誘拐捜査―吉展ちゃん事件
中郡 英男 著

今年、
ヘニング・マンケルや
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァール、
それに、ヒラリー・ウォー、
加えて日本では、
佐々木譲、今野敏らによる、
優れた警察小説を読んできましたが、
その線上で出会ったこのノンフィクションに、
驚かされました。
並みの小説では追いつかない内容・展開に言葉を失う。

大抵の警察小説は、主人公の立場に寄ってしまいますが、
これは、著者が元新聞記者でありながら、
平の刑事からキャリアの管理官に至るまで偏りのない書き振りで、
鮮やかな展開に説得力を持たせています。
事件から時を隔てたからこそ書けた、という感じを受けました。

現実に起きていた失策、裏付け捜査の難しさ、
そして警察内での立場の違いによる判断の対立、
それから、思いもかけない展開は、
その後、警察小説を読み進める気を喪失させました。

「フロスト気質」は、退けて。
書評家〈狐〉の読書遺産
山村修著
2007 文芸春秋

まことに守備範囲の広い読書案内で、
なおかつ、丁寧な読書に支えられた書き振りです。

「悪魔のような女たち」を毎日新聞で評した鹿島茂に向かい、
ーよろしいか、鹿島さんー
と間違いを質している。

小泉八雲と漱石に学び、
二人の教師が偏愛したメレディスの奇作を訳した、
皆川正禧を紹介した文章は力が入って、
「すごいではないか」と述べている。

「嵐が丘」「白鯨」の訳の紹介を読むと、
是非に今、読みたくなること請け合いです。
時代の気風に染まった言葉の力をうまく使っている。
既訳の上に尚訳し加えた訳者の心意気を感じさせてくれます。

今朝発売の毎日新聞で新刊を紹介されていた中野三敏さんの、
既刊も紹介されてあって、その奇遇に驚きました。

あの関根正雄さんの息子さんが同じく聖書について書かれた、
「旧約聖書の思想 24の断章」の文章の末尾には、
驚かされました。

こうして紹介していくと著作権の心配が出てくるほどに、
同じ本読みにはたまらない話題が満載されています。
ただの活字中毒ではなく、
きちんと文章を味わうことを大事にする世の本読みたちには必読書でしょう。

買っちゃおうかな?
この本片手にどれほど楽しめるか計り知れません。


プロフィール

Author:ききみみずきん
職業は、製本工。
司書の講習も受けました。
趣味は、読書と映画と文章を書くこと等など



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